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ねこと眠る箱庭

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赤いほうき星と黒の呪文

Story1 願い星

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「あ。見て見て。流れ星」

空気が悪いから、と、のそのそとベットを出て、
窓を開けてくれた彼の腕の隙間から、
なんとなく空を見上げた私は、はしゃいだ声をあげた。

「え?どこ?」

眠たそうな瞳が一回私を見て、
それから窓の外を向く。
見えたような気がした流れ星は、もうすでにどこにもなくて。
彼はちょっと困ったように笑って、私の頭をなでた。

「ほら、寝るよ」

同い年のくせに、二人の時は少しお兄さんめかして話すその言い方と、
私に対してだけほんのすこし甘く馨る声が、とても好きで。
特別なことをするわけではなく、
二人してもぐりこんだ布団の中でまどろむのが心地よくて。
時折、私をなでたり抱きしめたりする手が気持ちよくて。
まるで、猫になったように、私は甘える。
繋ぎ続けている手を、すがるように指でなぞる。
まぶたを閉じたら、さっき通った流れ星の残像が、
ちかりと映った気がして、
ぎゅっと強く目を閉じたら、彼の額がこつんと当たった。
目を開けたら、
星ではなく彼の瞳にぶつかる。

「ん?なに?」
「どうかした?」
「んー。流れ星が見えた気がして」
「そっか。なんか願った?」
「願いごとかぁ…」

思ってもみなかったなぁと、私は仰向けになる。
願い事なんて、あっただろうか。
ほしいものはたくさんある。
手に入れたいものも、叶えたいものも。
足りないものなんて数えられないほどで。
だけど。

横を見ると、彼は目を閉じていた。
寝てしまったのか、そうではないのか。

窓の外を見る。
きらりと赤い星が瞬いていた。
落ちてくるような気がする。
あの星は、私をめがけて落ちてくる。
そうして、綺麗な尾を夜空に架けながら、
まっさかさまにものすごいスピードで。落ちてきて。
私を貫くかもしれない。

ひょい、とそんな私の顔の上に彼の腕が覆い被さった。
とたんに、あの赤い星が遠くなる。
まるで、そんなもの初めからなかったように。見えなくなって。
振り返ったら、彼の腕の中にすっぽりと包まれた。

「…願い事なんて、今はないなぁ」
「ん?」
「今この瞬間に。願わなきゃ、いけないことなんて。ないな」

一言、一言、区切って伝えたら、
半分だけ開いた瞳で、彼は、笑う。

「そっか」
「うん」
「それは、よかった」
「うん」

猫のように、彼の手の中に頭を寄せて、
私は、
たぶん助かったんだろうなぁ、と。
妙な気分で目を閉じた。

星の残像は、もう見えなかった。



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