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ねこと眠る箱庭

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赤いほうき星と黒の呪文

Story2 唄い星 (後編)

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きれいな歌声が心地よくて、
私はぼんやりと空を眺める。
目の左端に、ちかりと赤い何かが光って、まるで、横の彼が弾くギターのようだな、と、
その星を追う。
それは、まるで準備中の流れ星のようだった。
今にも、その体を闇から断ち切って、きれいな尾をひきながら、
あの空から落ちてくるのだろう。
ふるふるふる、と、準備のために震えているように見えるのは、
錯覚なのか、光量の加減なのか、赤いせいなのか。

あ、と。
思ったときには、もう始まっていた。
その赤い星が、まっさかさまに、私をめがけて落ちてきた。
いや、落ちてきた、という表現では生ぬるい。
それは、一直線に、向かってきていた。私に、狙いを定め。
貫こうという、強力な意思を持って。
そんなにすごいスピードではなかったが、私は、
逃げられない、と、思った。
ああ、そうか、もうだめだな、と。
心の隅の方で、そう思った。

「あ」

私の心の声と、本当に同じタイミングで、
隣の彼の歌が止まった。
そこにかぶさるように、ぶつんっと、激しく何かが切れる音がして、

ふと、
私は、目を覚ました。

「あぁ」

残念そうな声に、目を隣に向けると。
赤いギターから、弦が一本、あらぬ方向へと飛び出していた。

「え…?」

一瞬何が何だかわからなかったが、
ぼんやりと、軌道が外れたのだと思った。
私に落ちるはずの星は、きっと、ギターを直撃したのだろう、と。

「え?あ、すみません。切れちゃったみたいで」

私の疑問が自分に向けられたのかと思ったらしく、
彼はちょっとはにかむようにして、きれいに弦を張り替え始める。

「願いごとですか?」
「…え?」
「空、見上げてたから。今日は、星がたくさん出てるし」
「そう、ですね」

星に願いをなんて、子供のような発想だな、とも思ったが。
私は、何か願っていただろうかと、空を見上げる。
何事もなかったかのように、沈黙している空に、
さっきのような赤い星はどこにもなかった。

「よく、わからないです。願い事なんて、もうずいぶん、してなかったから」
「それは、もったいないですよ」

いつのまにか弦は張り終えられて、ギターが緩やかに歌いだす。

「もったいない、ですか?」
「はい。だって、願うだけならタダなんですから。好きなだけ、願えばいいんです。叶うかどうかは、努力と運しだいですけどね」
「あなたは」
「はい?」
「あなたは、何か願ったんですか?」

思い出したように、ありがとうと、私は接着剤をその手に返す。
おもむろにそれをポケットに放り込んでから、彼は、
いたずらそうにその瞳を赤く光らせて、笑った。

「俺は、歌いたいなと、いつも願ってますよ」



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