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ねこと眠る箱庭

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くもりクロス

No1 夢と現実-1

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    No.1 夢と現実



『ごめんね、許して』

彼女は、そう言って、笑う。

『ごめんね』

ちっとも悪びれた風のない、微笑んだ唇で、言葉だけは僕に謝る。
僕はなんとなく呆けてしまって答えずにいるけれど、
まるで僕の反応などには興味がないかのように、
彼女は、僕へと、細く白い腕を伸ばす。
冷たいその指が、僕の首に食い込んでいく。
痛いとか苦しいとかそういったことは一切感じない。
さして抵抗もしないまま、ぼんやりと、僕は死んでいく。
動かなくなった僕を見て、傍らに跪いた彼女は、なんら変わらない表情で笑っている。
それは、とても、甘い、微笑み。

『ありがとう』


* * * * *


そんな夢を見るようになったのは、ひどく最近のことだ。
連日、というほど僕の眠りは浅くないのだけれど、それでも、夢を覚えている日を並べてみれば、連続しているくらい頻繁に、僕は、同じ夢を見続けている。
正確に全く同じというわけではない。
なんとなく、いる場所や、時間帯や、そういったものは違う気がしている。
けれど、起きる出来事は毎回同じで。
彼女の話す言葉も、ほとんど、似たようなもので。
寝ても覚めても、心のどこかでひっかかっていて、最近少し気分が悪い。
そんな夢の『彼女』は、僕の、クラスメイトだったりする。

高梨遥―たかなしはるか。
それが、彼女の名前。

いまどき珍しい、染められていない黒い髪。
特にこれといった特徴のない顔、体つき。
制服のスカートも短すぎることはなく、あわせられた紺色のハイソックスも、とても無難で。
目立つような行動もせず、全体的に「平凡」という鎧をまとっていて。
僕とは、全く、接点のない、彼女。
高校二年になった今年、同じクラスになってから、もう半年もたつが、
会話をした記憶は、特にない。
そんな、彼女。

はっきり言って、毎晩夢に出てくる理由が、ない。

でも、そう。
彼女の声は、なんとなく、好きだった。
もちろん話した記憶での声ではない。
現代文の授業中に、教科書を朗読させられていた、彼女の声だ。
ほとんど眠りに落ちていた僕は、夢うつつの中で、その声を聞いていた。
興味のない内容の興味のない文章は、いつものごとく右から左へと流れていたが。
僕の斜め前の方から聞こえるその声は、とても、僕の好きな音をしていたのだった。



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