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ねこと眠る箱庭

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くもりクロス

No.1 夢と現実-3

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教室のざわめきは、嫌いじゃないBGMだ。
少し年若い音程が絶え間なくあふれて、同じ生地の制服たちが擦れあって揺れる音は、どことなく波音にも似ている。
リラックス効果?ヒーリング?
自分で思っておかしくなって、僕は、腕の間で微かに笑う。

「北原、また寝てんのかよ」

比較的よくつるんでいる間淵の声が、唐突に頭の上から降ってきた。

「成長期なんだってさ」
「もう無理だろー。伸びねーだろ」
「あはは、いえてる」

椎名のかわいらしい笑い声が、間淵の声に重なって鳴るのが、遠くに聞こえる。
目を閉じるだけで、段々と睡眠欲に関係なく眠くなってくる気がするから、不思議だ。
ゆらゆらと、白い世界が広がり始める。
靄のような、朝焼けのような、鈍く、ほの明るい、まどろみの世界。
ああ、きっとまた。
また。
彼女が。

『あ、ごめんね』

ああ、また、あの夢か。
また、彼女に、殺されるのか。

『ごめんね…間淵君』

あれ?いつもと違う、ような。

「ん?なに、高梨?」

唐突に脳が覚醒する感覚がした。

「これ、各部の部長に配布しろって。プリント」
「え?ああ、文化祭?」
「そう、提出期限とかは書いてあるから」

彼女の声が、僕のすぐ上からしていた。
現実世界で。
彼女が、話していた。
夢が始まったわけではなかったのかと、僕は、うっすらと目を開ける。
ぼんやりとした視界に、プリントを手渡し終えた、細い白い指が見えた。
ああ、夢の中と同じだ、と僕は思う。
けれど現実の彼女の指は、わずかではあるが、体温を感じさせる赤みを持っていた。

「あ、え、ねえ、ここって何書くの?」
「あぁ、そこは、部長の名前と顧問の名前。一応、責任者だから」
「あ、そういうこと。うわ、内容とかめんどくさいな」
「じゃあ、よろしくね」
「ん。サンキュ」

間近で聞く彼女の声は、ひどくおとなしかった。
どこか困ったような、遠慮するかのような。
夢の中で聞いている彼女の声のほうが、好きだなぁと、僕は顔をあげる。
とたんに世界に色彩が戻る。赤、青、白、黒。ぐるぐると回る世界の中で。
ふっと息をのむような声が、いやにはっきりと、聞こえて。
少し、びっくりしたような彼女の瞳が、僕を、映していた。




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