FC2ブログ

ねこと眠る箱庭

スポンサー広告

スポンサーサイト

 
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。



*Edit
   

くもりクロス

No.2 印象-1

  Back  Next




    No.2 印象


北原修司―きたはらしゅうじ―という人を、
私は、よく知らない。
眠っている姿ばかり、いつも見ている。

クラスメイトの一人で。
すらりとした背格好に、かわいらしい顔立ちの男の子、という評判があるのは知っている。
これといった特別な接点もないため、
話した記憶は、たぶん、ない。
彼は、驚くほどに、いつもよく眠っている。
授業中も、休み時間も、たまに放課後まで寝ているのを見たこともある。
見かけるたびに、彼の頭は、机につっぷしていて、
まともに正面から顔を見たこともないだろうな、とも思う。
そして、今日もまた、
目の前には、眠る彼の後頭部がある。

「あれ?高梨さんって、文化祭委員だっけ?」

北原君の隣の席に座る、クラスで1、2を争う美少女の椎名さんが、かわいく小首をかしげた。
私は、わけもなく困って小さな声で、違うよ、とだけ言う。

「高梨は美術部の部長。お互い、三年がいないせいで部長なんだよな」

間淵君が、合いの手を入れてくれる。
二年で部長を務めているのがお互いだけなので、私達は、そこそこ仲が良い。
とはいっても、話をすることが出来る、というレベルなのだけど。

「うん」
「へぇー、部長って大変そう。えらいねーふたりとも」
「だろ?もっと誉めてもいいぜ」

なに言ってんのよーと椎名さんに小突かれて、楽しそうに笑う間淵君を横目に、
何の気はなしに、私は、北原君の頭を見ていた。
綺麗な髪の毛だなぁ、と、思う。
触ってみたいな、どんな感触がするのかな、猫の背中みたいだな、と、
とりとめもなくつらつらと考えていたら、
不意に、
彼が顔をあげた。

思わず息をのむ。

彼の瞳が、
的確にまっすぐに、私の姿を捉えたからだった。

「ん?起きてたの?北原」

そう椎名さんに問いかけられているのに、
彼の瞳は私からはずれなかった。
なんだろう、何か、変なところがあるのだろうか。

「今、何時?」

ぼそっと、見た目の印象よりも、少し低めの声がつぶやく。
口の中が、唐突に干からびていく気がした。声が、出ない。

「あと2分で4限開始」

間淵君が答える。
ふぅん、と吐息混じりに返事をしている北原君の瞳は、
相変わらず私を捉えたままで。

「…な、なに…?」

どうにかこうにか搾り出した私の声は、変なかすれ方をしていた。
その私の反応にか、ほんの少し訝しがるように右眉をあげてから、
彼は、
あきれたように、小さくつぶやいた。

「夢かと、思った」



Back  Next
スポンサーサイト



   

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。