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ねこと眠る箱庭

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赤いほうき星と黒の呪文

Story3 忌み星 (後編)

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今日はずいぶんと天気がよく。
よどんだ空にも、星がきらきらと輝いていて。
だから、数分前の俺は、
オトウサンに殴られながらも、ぼんやりと、白くなる視界の中、
窓の外を見上げていた。

赤い星が、見えた。
星って白いものじゃなかったっけ?とか、
赤いってことは空気中の埃が多いんだっけ?とか、
結構俺はのんきだった。
だって、痛みはもうほとんど感じなくなっていたから。
人間は慣れの生き物なので。
毎日毎日あきもせずやられていれば、興味もなくなる。

ただ、
折られた携帯電話だけは、ちょっぴり悲しかった。
悲しかったから、たまたま見えた、その赤い星に、
願いをかけたのだ。

オトウサンを、消してくれないか、と。
きっちり三回唱えてみた。
本当は流れ星でないと叶わないのはわかっていたけど、
それでも。

そうしたら、その赤い星が本当に落ちてきて、
それはもうミサイルか何かのようなスピードで、
きらきらと闇の中をヒーローのように駆けて、そして、
俺の目の前でオトウサンをざっくり突き刺した。
それで、突然、
殴っていた手が宙に浮いて、そのでかい図体がどんっと床に倒れたのだった。

「もっとましな願いにすればよかったかな」

どうせ叶うなら、富や財宝やなんかもっと幸せな願いにすればよかったかな。
倒れたきり、オトウサンはいまだに動かない。
もう一口だけ、ソーダ水を体に流し込んで、
俺は、机の上にむき出しになった一万円札をありったけつかんだ。
小さなポシェットに、それを綺麗にたたんでしまいこんで。
それを肩にかけて、
靴をきちんと履いて、
もちろん上着を着ることも忘れず、
ついでに、一応、ほっぺたに湿布も貼ってみた。
ひんやりして、気持ちよくて、いまさらちょっと体のあちこちが痛いことに気づいたが、
もうそれは今の時点では関係がない。
玄関のランドセルは置いていくことにした。
壊れた携帯電話もだ。
それで、もう、準備は整った。

「じゃあ、さようなら、オトウサン」

俺は、たぶん二度とこの家には戻らない。




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