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ねこと眠る箱庭

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*Edit
   

彩箱   ~色が題のSS~

青 (前)

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    『青』


彼女が飛び降りた。

白い羽を、
唐突に背中に広げて。

僕は見ていた。
何の変哲もない学校の屋上で。


* * * * *


私ね、自殺したのよ。
と、
彼女が言ったので、
僕は何の話かなと思って首を傾げた。
まだ春の来ない、3月の、小さな季節の隙間で。
いつも通りの制服にそれぞれ身を包まれ、意外においしい購買のメロンパンを頬張っているところだった。

『何の話?』

僕は、カフェオレに口をつけてから、再度聞き直した。

『なにが?』

こぼれ落ちるメロンパンの表面と格闘しながら、彼女が応える。

『いや、今の話』
『あぁ、うん。だからね、私、自殺したの。先週の金曜日に』
『………ふぅん』
『信じてないな?』

丸い目をぐるりと回して彼女が僕を見る。そりゃ信じないだろう、現にここにいる相手が自殺したなんて、と、思いっきり顔に書いて僕は見返した。

『…100歩譲って、自殺未遂だろ?』
『じゃあ101歩譲ってよ。本当に自殺して死んだんだけど?』
『幽霊はメロンパンを食べるのか?』
『大好物なので。ごちそうさま。それちょうだい』

流れるような仕種で、ビニールをぐるりとまとめ、僕の左手からパックのカフェオレを奪う。
するすると、茶色い液体がストローを滑った。

『…飲むのか、幽霊が』
『気合いの問題なので』

はい、と随分軽くなったパックを戻して、彼女がよいしょと立ち上がった。

『じゃあ、そういうことで』
『いやいや待て待て』

思わず僕も後を追う。
伸ばした手は彼女の腕をかすめて空を切った。
なんでもないような顔で、僕の3歩先で振り返り、にやりと笑うと、彼女は屋上のフェンスにもたれかかった。



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