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ねこと眠る箱庭

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短編箱  ~SSの溜まり所~

明日のキス

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その日はほんの少し肌寒い日だった。
布団に包まってもそもそと惰眠をむさぼっていた私は、ふいに、隣に彼がいないことに気がついた。

「……俊?」
「おぉ、起きた?」

ひょい、とダイニングの方から戻ってきた俊は、ちょうど薄手のジャケットを羽織ったところだった。
お気に入りのこげ茶色、私が誕生日に買ってあげたもの。
寝起きのぼんやりとした視界で、それだけが映る。

「……あれ?」
「ん?」
「出かけるの?」

んー、と私が伸ばした左手を、遊ぶようにからめとって俊が笑う。

「昨日言ったじゃん」
「うーん?」
「昼にサークルの集まりがあるって」
「…そうだっけ?」
「寝る前に言ったって」
「うー」

ぶんぶんと彼の手を振りきって、再び布団の中にもぐりこむ。
寒いの?とおかしそうに笑う声が頭の上から降ってくる。

「サーヤー」
「うー」
「サーヤーさんー?」
「…ナンデスカー…?」
「眠いの?寒いの?すねてるの?」
「全部デス」
「はいはい」

布団の上から、私の頭の辺りをぽんとやさしくたたいて、夜には帰ってくるから、と俊が言う。
まどろみに入りかけていた私は、声にならない返事をした。
遠くの方で鍵が閉まる音を聞きながら、あぁ、そうだ、冷蔵庫に昨日買ってきたロールケーキがあったのに、と思った。俊に言い忘れてしまった、いいか、今夜、早く帰ってくるのかな?それならそのときにいって、一緒に食べれば。なんて、とりとめのない思考と布団とにくるまって、久々の休日を、一人過ごすために眠りの世界にはまっていって。


だから、
目が覚めたときに、
世界がそんなにも変わっているだなんて、思いもしなかったのだ。





――夜になって、
なかなか帰ってこない彼にほんの少し不安を抱いたころ、
彼の友人から、1本の電話が鳴った。



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